アメリカの心理学者A.マズローが主張する「人間に関する基本的欲求」の視点から、中島敦と芥川龍之介の私生活と文学活動に触れながら、自己実現の意味と重要性を論ずる。「中島敦のことを考えると、どういうわけか芥川龍之介のことが頭に浮かんでくる」という著者は、一見かけ離れて見える両者の生涯をたどりながら、終末に近づくにつれて酷似してくる二人の自己実現の風景を描ききる。